森林表土利用工 NETIS CG-210008-A(掲載期間終了技術)
「森林表土に含まれる埋土種子を活用して、現地の植物による植生復元と生物多様性の保全を目指します。」
近年の自然環境や生物多様性への高い関心によって、のり面緑化工に対しても地域の自然生態系の保全に配慮することが多くの場面で求められてきています。
マザーソイル工法は、地域の森林表土(表土シードバンク)を利用することで、地域の植生回復を図る工法です。
近年の緑化事業では、生物多様性保全の観点から、地域の植物を利用し、周辺の自然環境と調和した植生を復元することが求められています。
マザーソイル工は、施工予定地やその周辺から採取した森林表土を使用し、その中に含まれる埋土種子集団(表土シードバンク)によって、現地の植物による植生を復元する、地域生態系の保全に配慮したのり面緑化工です。
森林表土には色々な植物の埋土種子が含まれています。埋土種子は、現地に自生する植物から散布されたもので、中には、数十年にわたり土の中で休眠しているものもあります。そのため緑化に使う森林表土は、一年を通じていつでも採取可能であり、また1年以上保管しても発芽力が失われないことが知られています。
マザーソイル工は、森林表土を活用により、種子を用いることなく周辺環境と調和した植物群落を復元します。種子の供給現となる植生が周辺にみられない場合にも、より速やかな緑化が可能です。表土に含まれる埋土種子により、数多くの種類からなる植生が成立することから、生物多様性保全の観点からも優れた緑化手法といえます。
マザーソイル工は、専用の植生基材に森林表土を配合して吹付施工する「マザーソイル工法」、現地発生材である伐採木チップを活用する「資源循環型マザーソイル工法」と、現地で作成した表土袋を植生マットに装着して施工する「マザーソイルマット工法」の三つの工法をラインナップしています。
森林表土とは、森林土壌の最上層をさし、落葉落枝などの有機物が分解された腐植に富み、膨軟で通気性、透水性が良好といった特性を有します。
森林表土中の埋土種子は、地表から5~10cmの範囲に全体の80%が含まれていることが知られています。マザーソイル工法では、この部分に相当する層位(下図のF層~A1層)だけを選択的に集めることで、林床を荒らすことなく、埋土種子密度の高い表土を採取します。
表土シードバンクを採取後、直ちに吹付施工する場合は、施工予定のり面付近に集積します。採取してから吹き付け施工まで期間を要する場合には、林内などに直射を避けて保管します。
施工条件に応じて2種類のファーザーネットを使い分けます。立体形状の金網にヤシ繊維製帯を挿入した独自の構造により、優れた侵食防止効果を発揮します。
採取した表土シードバンク、専用の生育基盤材「マザーソイル」とバーク堆肥またはピートモスにベースソイラーと用水を加えて攪拌し、ファーザーネットの上に所定の厚さで吹き付けます。
マザーソイル
マザーソイルは、肥料と土壌改良材を工場内でブレンドした専用の生育盤材です。
資源循環型マザーソイル工法は、生物多様性の保全と循環型社会の形成に寄与することを目的としたのり面緑化工法です。現地植生の復元を可能とする表土シードバンクと伐採木を粉砕した木質チップの組み合わせにより、現地資源を有効活用した植生回復を図ります。
マザーソイルマット工法は、表土シードバンクを利用する植生マット工法です。人力施工により大型吹付機械の設置が困難な現場でも施工が可能です。